はじめに
日本人になじみ深い胃・十二指腸潰瘍にヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)が深くかかわっていることがわかり、その治療法が大きく変貌しています。
ピロリ菌は、鞭毛という足を持ったらせん型の細菌で、胃内に棲み着いています。最近の研究では、ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんや胃悪性リンパ腫の発生にも関連があるとされ注目を集めています。
ピロリ菌の発見方法は?
ピロリ菌の発見方法には、内視鏡で胃粘膜を採取して検査する方法と内視鏡を使わない方法があります。
後者には尿素呼気検査(検査薬服用前後の呼気中の炭酸ガスを検査)があり、胃の一部だけにわずかなピロリ菌がいても見落としが少なく信頼性の高い検査です。当院でもいち早く尿素呼気試験を導入し、日常診療で活用しています。
新しい治療法は?
従来の治療法は、胃酸を弱める薬や胃酸から粘膜を保護する薬を服用することや、ストレスの軽減、規則正しい生活など生活習慣を改善することが治療の主体となっていました。しかし、これらの治療ではいったん潰瘍が治っても、繰り返し再発することが問題でした。
そこで登場したのが「ピロリ菌の除菌療法」です。胃・十二指腸潰瘍患者さんの約80〜90%がピロリ菌に感染しているといわれ、ピロリ菌の除菌療法は日本でも2000年11月に保険適応になり、当院でも日常診療に活用しています。
おわりに
日本人には「胃の具合が悪い」と訴える人が多いといわれています。その場合、胃・十二指腸潰瘍のことや、潰瘍と同じような症状を示す胃がんなどの悪性腫瘍のこともあります。症状のある場合には「以前からあるものだから、もう少し様子をみておこう」とか「どうせ潰瘍だから、大丈夫」と放置したりせず、早めに受診の上、適切な治療を受けて快適な日常生活を送ってください。