増加する膵臓がん
わが国では、毎年一万八千人以上の方が膵臓がんで亡くなっています。しかし、その診断と治療はいまだに難しいことが知られています。
膵臓は身体のまん中にあり、胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓などに囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しいのです。また、早い段階では特徴的な症状もありません。このような理由で、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つかるということはほとんどありません。
膵臓がんの症状は
膵臓がん、特に早期の膵臓がんに特徴的な症状はありません。
膵臓がんの方が病院へ来られた理由を調べてみますと、最も多いのは胃のあたりや背中が重苦しいとか、なんとなくお腹の調子がよくないとか、食欲がないなどという漠然としたものです。この他に、体重の減少などもよくおこります。このような症状は膵臓がんでなくてもいろいろな理由でおこるものです。比較的膵臓がんに関連のあるものとして、身体や白目が黄色くなる黄疸があります。この時は、身体がかゆくなったり、尿の色が濃くなったりもします。
検査法は
漠然とした消化器症状の型に対しては、まず超音波検査や内視鏡検査などを行って、胃炎・胃潰瘍・胆石などの一般的な消化器の病気がないかどうか調べます。
超音波検査では膵臓の観察もできますので、異常があれば次の検査に進みます。また、超音波では異常がはっきりしない場合でも、症状や血液検査のデータで、膵臓や胆管などに病気のある可能性がある場合には、X線CTやMRIなどの検査を行います。また、ERCPという検査を行う場合もあります。この検査は、胃カメラのような内視鏡を十二指腸まで運び、十二指腸乳頭という膵管と胆管の出口に細い管を差し込み、造影剤を注入して膵管や胆管の形を調べるものです。この時に、膵液を採取して細胞の検査を行うこともあります。最近では、MRIを利用してERCPと類似した情報を得ることができるMRCPという技術も普及しました。
終わりに
水島協同病院でも過去二年間で膵臓がんを発見された方が急増しています。昨年度導入されたマルチスライスCTも膵臓がんの発見には非常に有用ですので、なにか気になる症状があれば外来で相談をしていただくようにお願いします。