第103回:在宅の願いにこたえて
水島虹の訪問看護ステーション |
水島虹の訪問看護ステーション 高瀬 香織 |
在宅での療養生活を支援する訪問看護ステーションの活動に、今大きな期待がよせられています。水島虹の訪問看護ステーションの高瀬香織さんに手記を寄せてもらいました。(編集部)
「みんな、家に帰りたいんよ」
「やっぱり家がええな〜」Aさんは約1年間の入院生活を終え、久しぶりに我が家へ帰りました。入院中とは違うリラックスした表情で私(高瀬)にそう言いました。また、入退院を繰り返していたBさんは、往診、訪問看護、ヘルパーなどの在宅サービスを頻回に利用していただくよう調整し退院しました。4カ月の間一度も入院せず在宅生活に自信を取り戻したBさんは、私の目をじっとみつめ「あんな、誰も病院にずっといたいと思う人なんかおらんのよ。(入院患者は)みんな、本当は家に帰りたいんよ」と言いました。
安心な在宅生活を訪問看護師が支援
Aさんも、Bさんも主治医からいつでも退院しても良いと許可を得ていたのですが、退院を何度も延期していました。自宅へ帰りたい気持ちがあっても、患者さん自身やご家族だけで在宅生活を安心・安全に過ごすということを具体的に思い描くことが難しく、病院から出ることはとても勇気が必要なことでした。しかし、私たち在宅サービスに携わるスタッフが退院後の生活へ具体的にどういう関わりをするのか提案させてもらうことで、在宅への一歩を勇気をだして踏み出すことができたのです。
その人らしさを求めて
昨年10月、古い長屋に一人暮らしをしていた癌終末期の利用者様をご自宅で看取る経験をしました。一度入院されたのですが、病棟へ面会にいくと私の顔をみるなり「あー、高瀬さーん、帰りたいんじゃー」と手を合わせて涙を流されました。Cさんの帰りたい思いを実現しようと、その後在宅サービス業者の7事業所と連携し一人暮らしのCさんの在宅生活を支えました。そして退院後11日目に自宅で永眠されました。Cさんからは「(自分のそばには)あんたらがおるからええ」という訪問看護師冥利に尽きる言葉をいただきました。
Cさんの経験を通し、癌末期患者様に限らずホスピスケアを行う上で、自宅でのおもてなしはその人らしさをより高められる環境だと感じました。どんなに病室を美しく快適に環境整備しても、慣れ親しんだ自宅にはかなわないのです。その人らしい人生の輝きとは何かが一番よく見えるご自宅で看護できる幸せをかみしめながら、これからも利用者様たちの願いに答えられる訪問看護をめざしてがんばります。 |
- Cさんの誕生日最後の外出となったとき
- 左上から、
- 高瀬香織さん(訪問看護師)
- 森脇あゆみさん(ケアマネ)
- 森田悦子さん(訪問看護師)
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