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健康シリーズ HEALTH

顔写真第7回「救急蘇生法について:その1」

水島協同病院 外科医長
山本 明広

 昨年より水島協同病院では、倉敷市の救急救命士の実習を受け入れています。これまで二回、院内学術集談会にも参加、発表して頂きました。そこで、今回から三回シリーズで、救急蘇生法についてお知らせしたいと思います。
 急に家族が心臓発作で倒れた時、子供がプールでおぼれた時、さて、何が出来るでしょうか?ドリンカーの救命曲線(表)によると、呼吸停止から二分後に心肺蘇生を始めると、90%の確立で救命できますが、十分後では、ほとんどゼロとなっています。
 脳が酸素なしで生きられる時間はわずか三〜四分と言われています。つまり、心停止後三〜四分で脳は決定的なダメージを受けてしまうのです。
 救急車が119番通報を受けてから現場に到着するまでの平均所要時間は五〜六分(五〜七分、2000年度)です。この間、何もしなければ救命率は25%以下となってしまいます。
 このシリーズでは、機材なしにできる一次救命処置について学習していきます。
 倒れている人を見たら、(1)意識の有無を調べます。(2)助けを呼び、意識がなければ(3)口の中を調べます。(4)異物があれば除去した後に(5)気道確保、(6)呼吸を調べます。呼吸があれば(7)人工呼吸し(8)脈拍を調べます。脈拍がないときは(9)心肺蘇生が必要で、心マッサージを開始します。救急隊の到着まで続けます。
 胸骨圧迫心マッサージは、図のように両手掌を指を絡めて胸骨下半分に置き、患者の真上から、肘関節をまっすぐに伸ばして垂直に圧迫します。力を抜くときには完全に抜き、そして、圧迫している時間と力を抜く時間は同じであることがコツです。
 次回は一連の一次救命処置について、解説していきます。なお、各地元の消防署では、市民を対象として一次救命処置の指導をおこな
っています。班会で取り組まれるところは、組織部または、外科の山本までご連絡ください。
グラフ 図

顔写真第8回「救急蘇生法について:その2」

水島協同病院 外科医長
山本 明広

 前回のおさらいからです。救急車が現場に到着するまでの時間は五〜六分ですが、脳が酸素なしで生きられる時間は三〜四分でした。
 米国では、心肺停止に陥った人が救急処置を受けて、社会復帰する確率が25%と高く、日本では1%と歴然とした差があります。このことは、医療の質というよりは、一次救命処置の有無が大きく関係しているといわれています。あの、イチローや佐々木のいるシアトルでは、70%の市民が一次救急処置の技術を持っているとされます。小学校の高学年から、中学まで、義務教育で救急処置の教育がされ、その後も継続的に講習会で再教育がされているなど、行政、市民ともに応急手当に対する関心が高いのです。
 倒れている人を見た時どうしたらよいのか、消防庁の資料からフローチャートを載せておきます。(図1)
 気道確保、人工呼吸について今回は勉強しましょう。 気道確保は、空気が肺まで楽に通るように、気道の詰まった状態を除く方法です。気道が開通していなければ、人工呼吸も効果はありません。
<気道確保のポイント>(図2)
・頭部を後方へ反らせる。
・適宜、下顎挙上を併用する。
気道を確保しても、呼吸がなければ一刻も早く人工呼吸を行わなければなりません。
図2の説明…前額部においた手掌で頭部を後屈し、他方の手の示指、中指の指先を用いて下顎部を前方へ移動させる。母指は下口唇を押し下げ、口を開けるために用いる。
<人工呼吸のポイント>(図3)
・頭部後屈を続けながら呼気を吹き込む。
・頚動脈の拍動があれば、一分間に12回のリズムで人工呼吸を続ける。
図3の説明…口移しで人工呼吸する場合は、感染の危険を避けるために、ハンカチなどで口を防御して行います。救助者は、気道を確保したまま、疾病者の鼻をつまみ、胸が膨らむのを確認しながら、大きく息を吹き込みます。
図1
図1 救急蘇生のフローチャート
図2 図3

顔写真第9回「救急蘇生法について:その3」

水島協同病院 外科医長
山本 明広

 今回が、このシリーズの最後です。これまで二回のシリーズでは、気道確保、人工呼吸、心マッサージのポイントについて学習してきました。実技、実習を受けたい方は、各地の消防署でも市民を対象に直接指導を行っています。組織部、または、外科の山本までご相談ください。
 仕上げは、実践編です。こんな時、どうすればいいのをテーマに三つの場面を想定しました。
1、子供がおぼれたとき(図1)
 まず、水から引き上げて意識がないときは、救急車の来るまでの間、大人の口で、口と鼻をおおい、ゆっくりと息を吹き込み、人工呼吸をします。心マッサージは、胸が二・位へこむ強さで行います。息を吹き返したら顔を横に向けて、うつ伏せにして、背中をたたいて水を吐かせます。
2、のどに食べ物をつめて倒れたとき(図2・図3)
 子供なら、足を持って逆さにつるし、背中をたたいて吐かせます。大人の場合は、救助者の膝にお腹をあてて背中を押す、または、背中側からお腹に手を回して引き上げるようにして腹部を圧迫して吐かせます。屋内で掃除機があれば先を口に突っ込んで異物を吸い出すのも有効です。その後、気道確保、心マッサージへとすすみます。
3、急に倒れたとき
(脳卒中、心筋梗塞など)
 病気の場合は、前兆があることが多いのですが、意識消失して倒れたとき、脈拍はあるか、呼吸しているかを確認します。呼吸していれば、横向きに臥床させ、嘔吐しても大丈夫な体勢にして、動かさずに救急隊の到着を待ちます。心肺停止の時は救急車の到着まで蘇生を続けます。病気の場合は、事故とは異なり、すぐに蘇生することは少ないため、応援を呼ぶことが何より重要です。
図1
図2
図3
図
口対鼻人口呼吸法
背部叩打法
用手胸壁圧迫法立位

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