第61回:歯の健康・かむことの大切さ 正しいブラッシングを |
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水島歯科診療所歯科医師 石川敦子 |
80歳で20本 私たちの生命活動は、言うまでもなく食べることによって支えられています。ところが、歯の寿命は長くなった平均寿命に追いついていません。厚生労働省では80歳までに20本の歯を残すことを目標にしていますが、実際は80歳に20本の歯をもつ人が15.25%というのが現実です。 歯を失わないためには歯磨きが大切です。健康増進の八つの生活習慣の中に一日一回以上歯磨きをすることが指標となっています。ほとんどの人が一日二回以上磨いているのですが、磨き残しが多いのが現実です。食事後、歯垢のたまりやすい所を重点的に磨くようにしましょう。 歯ブラシは古くなると、機能が弱まり長い時間磨いても歯垢をしっかり落とせないので、少なくとも一カ月を目安に交換したいものです。歯ブラシには長さ、大きさ、毛先の形状や形など、さまざまな種類のものがあります。口や手の大きさ、歯並びなどの口の形状、歯や歯肉の状態に合わせて最適なものを選びましょう。 しかし、歯ブラシだけでは限界があります。補助器具を併用することで、口の中の歯垢のほとんどを除去することができます。 よく噛んで食べる 残存歯数が20本あればほとんどの食品の咀嚼が容易であると言われています。80歳までの20本というのは、それが根底にあるのですが、よく噛むということは、単に食物を体に取り入れるためだけでなく、肥満を防ぐ、味覚の発達、言葉の発音をはっきりする、脳の発達、歯の病気を防ぐ、癌の予防、胃腸の働きを促進する、全身の体力向上など全身を活性化するのに重要な働きをしています。しかし、多忙な毎日の中で、噛むことをなおざりにしてはいないでしょうか。現に昭和十年代に比べ、噛む量は60%減少し、食べる時間も半減しています。よく噛んで食べるという基本的なことが健康維持に重要なこととなります。活力のある長寿社会を迎えていくためには、歯の寿命を延ばしていくことが必要です。 豊かな食生活 全ての人々が生涯を通じて自分の歯で豊かな食生活を楽しむことができるよう食生活の見直し、セルフケアを含め定期的な歯の検診が大切です。口の状態をきちんと把握し、関心をもつことにより健康の確保、さらには生きがいのある人生を送って頂きたいものです。 |