第76回:歯科ケアの信頼度抜群 北欧の歯科医療に触れて |
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玉島歯科診療所 歯科医師 滝本 博 |
玉島歯科診療所の滝本博歯科医師が、2月にスウェーデンとデンマークの歯科医療を視察しました。その特徴について話を聞きました。 今年2月、歯科保健・医療の分野でも世界の先進を行く北欧諸国の視察に参加してきました。デンマーク(コペンハーゲン市)とスウェーデン(イエテボリ市)の行政、大学、開業医、高齢者施設など様々な機関をめぐり、進んだ歯科ケアのあり方を見てきました。 子どもの歯科保健と医療が充実 両国の歯科を見て私が感銘を受けたことの第1は、子どもの歯科保健と医療に非常に力を入れていることです。18歳未満の公的歯科医療は歯科矯正も含めて全て無料で、人種の違いや様々な障害による差別を徹底的に排除しています。デンマークでは学校に歯科クリニックがあり、授業時間内に治療と指導を行っています。歯科のない学校からはバスやタクシーでの送迎が行われ、父兄への負担もありません。その結果、この30年間で子どもの虫歯を激減させました。スウェーデンでも市内の各所に公的歯科診療所を持っており、児童や高齢者の歯科治療を行っています。 歯科衛生士の職能広く確立 第2に、歯科衛生士の職能が広く認められていることです。両国とも以前から歯科衛生士が麻酔をすることや独立開業も許されていましたが、さらにデンマークでは今春から歯科医師の監督下でなら、全ての歯科処置ができるようになりました。 高齢者がゆとりある生活を 第3に、高齢者がゆとりある生活をし、その中で必要な歯科ケアが有効に行われていることです。スウェーデンでは歯科診療所付き高齢者住宅も訪問しました。自宅にいても施設に入所しても、必要な歯科治療が受けられるシステムができています。 第4は、民間開業医も含め、患者の権利に配慮した治療環境を実現と、適正な労働環境が整っている点です。治療室はほとんどが個室で、器材も最新のものでした。また、歯科医療従事者も週40時間労働で、バカンスは3週間以上取ることが義務付けられています。生き方そのものにゆとりを感じました。 そんな両国も成人の歯科治療自己負担は最高80%と高く、歯科受診抑制の要素となっています。しかし、それでも国民のほとんどが定期的に歯科ケアを受けるという関心の高さには驚きでした。デンマークでの世論調査で「税金を上げても、成人の歯科ケアを無料にしてほしい」と言う意見が過半数を占めたり、スウェーデンの職業別好感度調査で歯科医師が1位となった話を聞き、両国民の歯科ケアに対する信頼と期待の大きさを感じた視察となりました。
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